隣の彼の恋愛事情
ギロリと睨みかえされて、一瞬たじろく。
(ひーーー!鉄仮面出現ーーー!でも今弱みを握ってるのは私だもんね。)
心のなかでアッカンベーをする。
「お前、これで俺の弱み握ったなんて思ってんの?」
ニヤッと笑いを浮かべて彼が言う。
「へ?」
自分が思っていたような返事がかえってこなくて間抜けな返ししかできない。
「言っとくけど、これは家の仕事を手伝ってるだけ。」
「家の仕事?」
「そう、お前’青山グループ’って知ってるよな。」
「当たり前じゃないですが、うちの会社だってグループ内の会社なんですから。」
いったいなんの関係があるのよ。
「そう、俺の実家。」
「そうですか、実家ですか。」
(ん?実家?じ っ か ?)
「えーーーーーー!」
指で耳栓をして、うるさそうに顔を歪めている三浦さんが見えるが、そんなこときにしちゃいられない。
「なんで、うちの会社で営業なんてしてるんですか?」
「知らないのって私だけですか?」
「あと、えーっとえーっと」
聞きたいことがありすぎてわたわたしていると、
「うるさい。ちょっと落ち着け。」
(私こんな時余裕でいられるほど人間できてないんですけど)
吸っていたタバコを灰皿へ押し付けると、私の向かいの席へ三浦さんが座った。