隣の彼の恋愛事情
どの人も私をちらりとは見るが特別話しかけてくるわけでもない。

にこにこと営業スマイルを浮かべて斗馬の隣に立っていたが、だんだん人の輪から外れた。

最初こそは斗馬の近くに居ようと努めたが、それも無駄だと感じた頃壁際で今度こそおとなしく待っていようと思い、手にしたウーロン茶を飲むことで時間を潰していた。

(こんなんじゃまるでダメだな)

少し落ち込みながらも、遠くから斗馬を眺めていると私の知らない顔もまだあったんだなって思う。

会社で働いているときとも、私に甘えているときともどれとも違う斗馬がそこにして、少し遠い存在に感じられてさみしかったけれど、その顔もまたかっこいいなんて思っていた。

(一人にしないって言ったのに、でも仕方ないか・・・)


じっと斗馬を見つめていた先に、斗馬のお父様がいるのが見えた。

インターネットで検索したお父様は、もうなんだか雲の上の人という表現がぴったりで、斗馬にもこの血が流れているんだな、なんて変に感心したりした。

でも、あの強気な切れ長の目は間違いなく父親譲りで親子の証明のようだった。
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