隣の彼の恋愛事情
「ちょっと、こっち来い。」

そう言って私の右手をつかむと、会社の出入り口から死角になるビルの間に押し込まれた。

「なんですか、仕事の話なら週明けにしてください。」

アイツの目が見れずに下を向き言った。

「仕事の話ならこんなところでしない。」

掴まれていた手をさらに強く握られた。
こんな時なのに、握られた右手が熱い。血液がそこに集中する。

「お前さ、一体どうしたんだよ?」

溜息と同時にアイツが言う。

「どうって、どうもしてないです。」

「何がどうもしてないだよ。いつもならあんなミスしないし、ミスしてもすぐに挽回するのがお前だろ。」

私はうつむいたまま、アイツの言葉を聞いていた。

「それなのに、今週のお前は業務をただこなしてるだけじゃないか。それに・・・」


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