隣の彼の恋愛事情
実家の玄関をくぐると、懐かしい匂いを体いっぱいに吸い込んだ。

(やっぱり落ち着く)

自分の中のぐるぐるした感情が解決したわけでもないのに、スっと落ち着いた気がした。

「紅緒~!着いたなら、早く店に来て手伝って~」

家の奥にある花屋の方から声がした。

(まだお父さんの様子もみてないのに)

相変わらずの様子の母親に少し呆れた。

「お父さんの様子みたらすぐに行く~」

そう大声で答えて父親の寝室に向かった。

父親の様子は起き上がれないものの、私の帰宅に気をよくしたのかニコニコと私を迎えてくれた。

父の様子を確認したあと、肩口でゆれる髪をひとつに束ねて店番用のエプロンをつけた。

店に出ると、花の匂いで包まれた。

「早くこっちに来て~」

「すぐ行く~」

母の声に返事して急いで仕事と開始した。

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