隣の彼の恋愛事情
「ありがとうございました~」

お客様に声をかけて、次のお客様の接客に移る。

(こんなに忙しかったっけ)

ひっきりなしにお客様が来店する。一息する時間もないままに接客する。

バラやカーラー、ガーベラに金魚草、かすみ草。私の好きな花に囲まれて時間を過ごすのは、今の私には居心地のいいもので、ここに来たときに沈んでいた気持ちも徐々に浮上していた。

「今日はもういいわよ。早く準備して行きなさい。」

そう言った母の視線の先を追うと、店の入口にチィ兄がたって手を振っていた。

暗くなった歩き慣れた道をチィ兄と歩く。

長い足をゆっくりと進めてくれるチィ兄の優しさに顔がほころぶ。

「今日は、ありがとうね。」

そう言う私に頷いてにっこりと微笑んでくれた。

「何が?」

「ふふふ。何でもな~い」

気がつかない振りをしてくれているチィ兄に甘えることにした。
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