椿ノ華
縋る様な葵の瞳。
「…愛してる。愛してるわ、葵」
微笑んで頬を撫でると、
みるみるうちに泣きそうな程に表情が歪んで。
「…愛してる…」
果てる直前、葵が呟いた言葉は、
とても穏やかで、優しくて。
同時に、消え入りそうだった。
最近の葵は、どうもおかしい。
人間らしくなったと言えば、それまでだけれど…
「奥様?どうされました?」
「えっ…ああ、紫野(しの)」
「申し訳ありません。
読書に熱中されているのかとも思ったのですが、
どうも違った様なので。驚かせてしまいましたね」