椿ノ華
「…桜、かしら」
「さくら?」
「ええ、そうよ。春になったら綺麗に咲く桜。
それにね、桜は…お母さんのお母さん。
つまり、葵のお祖母ちゃんの名前でもあるのよ」
「そうなの?」
「とても綺麗で、強い人だった。
お母さんみたいに…桜みたいに、
綺麗な女の子に育ってくれればいいわね」
「君の娘だ、きっと美人に生まれるさ。
…ああ、そう考えたら嫁に出す自信が無いな…」
「ふふ、まだまだ先の話よ?」
「ねえとうさま、あそんで!」
「いいよ、何しようか?」
「こっちこっちー!」
楽しそうに庭を駆け回る葵を、笑顔で追い掛ける壱。
再びベンチに腰を下ろし、微笑ましく二人を見詰めた。