椿ノ華



「その着物、よく似合っているよ」

「えっ?あ、ありがとうございます…。

態々こんなに素敵な着物を用意して頂いて」

「孫にあげる初めてのプレゼントだからね、

とびきりの物でないと」


そう言って微笑む啓一郎に、椿も笑みを返した。


「遅れて申し訳ありません」


凛とした低い声が響き、振り返った。



…あ…

「おお、葵。待っていたよ」

「仕事が長引きまして」


葵と呼ばれた彼は、啓一郎に呼ばれて屋敷に行った日に、
じっと椿を見ていた男性だった。



< 26 / 243 >

この作品をシェア

pagetop