椿ノ華
「その着物、よく似合っているよ」
「えっ?あ、ありがとうございます…。
態々こんなに素敵な着物を用意して頂いて」
「孫にあげる初めてのプレゼントだからね、
とびきりの物でないと」
そう言って微笑む啓一郎に、椿も笑みを返した。
「遅れて申し訳ありません」
凛とした低い声が響き、振り返った。
…あ…
「おお、葵。待っていたよ」
「仕事が長引きまして」
葵と呼ばれた彼は、啓一郎に呼ばれて屋敷に行った日に、
じっと椿を見ていた男性だった。