椿ノ華



「あ、ありがとうございます」


目の前に差し出されたダージリン。


「お茶菓子のクッキーもございますので」

「はい。篠山(しのやま)さんの紅茶、美味しいから好きです」


カップを口元へ運び、香りを吸い込む。


「ありがたきお言葉。

この篠山、長年南十字家にお仕えしておりますが、

葵お坊ちゃまと椿お嬢様がこうしてティータイムをなさるなど、

想像もしておりませんでした。

とても嬉しゅうございます」


彼もまた、兄妹の事情を知り、
昔から仕えている数少ない使用人の一人だ。



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