椿ノ華



「…お前は?」

「え?」

「お前は、どんな幼少時代を過ごしたんだ。聞かせろ」

「…え、っと…」


聞かれるとは思っていなかったので、戸惑ってしまう。


「…お兄様からしたら、きっと、貧しい暮らしです」

「貧しい、とは?」

「お金は無いし…この家みたいな立派な所じゃなくて、

もっと小さくて古くて汚い家でしたし」


思い返しながら、目線を伏せる。

葵が自分を見詰めているのがわかった。



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