椿ノ華



「母との二人暮らしでしたから、大変な事もたくさんありました。

苦労しているのは知っていたから、

あまり遊びには行かずに家事をやって…

高校に入ってからは、勉強とバイト漬けでしたね」

「お前は特待生として成瀬川に入ったと聞いたが」

「ああ…はい。お金がありませんから、

高校にも大学にも行かずに働くつもりだったんですけど、母が、

だったら特待生として行けば授業料が掛からないじゃないって言うので。

簡単な事じゃなかったですけど、頑張りました」

「…お前は努力家なんだな」

「…少しでも、母の負担を減らしたくて」


一人で全てを溜め込んでしまう人だったから。



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