椿ノ華



その後連れて行かれたのは、美容院だった。

髪をセットされ、メイクまでされる。
サービスだと、軽いネイルもしてくれた。


「…私が私じゃないみたいです…」

こんな格好した事無い…

「気に入った?」

「…恥ずかしい、の方が大きいです」

「はは、こんなに綺麗な女性を連れて歩けるなんて僕は幸せ者だな」

「壱さん、人の店で惚気けないでくれますかぁ?」


ほんわかとした笑みを浮かべる壱にぴしゃりと言い放つ彼。

口調も表情もゆるゆるとしているのに、刺々しさが痛く伝わる。


「いいじゃないか廉(れん)。綺麗だろ?彼女」

「そうですね~、絶世の美女だと思います。俺芸能人もたまに相手しますけど、ぜんっぜん負けてない」

「ほら、僕って幸せ者だと思わない?」

「あは、憎たらしいな~」



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