さよならの見つけ方 第3章 *君の声がする*
その日、教会の聖歌隊席にマイケルの姿はなかった。
いつものように一番後ろの席についた私とクリスは、マイケルのソロパートを別の子が歌うのを、静かに聴いていた。
――――ちがう。
あ、ここも。
ブレスの仕方も、タイミングも…
ここはもっと、高らかに、優しくのばしてほしいのに…
耳に残る違和感が蓄積されていく。
代役のソリストは上手かった。
上手いのだけれど、どうしても比べてしまう。
マイケルとは、彼の歌い方とはこんなにも違う。
違いすぎる…
思わず握り締めたクリスの左腕を、私はずっと離せなかった。
ちらりとクリスの横顔を覗き見たけれど、その表情からは何も伝わってこない。
ただ前を見て、真剣に何かを考えているようだ。
「マイケル、大丈夫そう?」
ミサも終わりに差し掛かってきた頃、クリスが小さく私に尋ねてくる。
「…どうだろう。
今日私、まっすぐ家に帰ってもいい?」
「ん、もちろん。
なんかあったら呼んで」
「…ん」
マイケルは今、何を考えているのだろう。
高い窓の向こうに広がる暗い空が、マイケルの心をますます悲しませていやしないかと、
私はとても不安になった。