さよならの見つけ方 第3章 *君の声がする*
クリスに別れを告げ、急いで礼拝から帰宅すると、
閉じられたカーテンの向こう側に静かなマイケルの気配がした。
部屋の床には、分厚い楽譜の束が一面に広がっている。
その中の一枚を拾うと、楽譜にはたくさんのメモが書かれていた。
ブレスをする箇所や、
強弱の付け方や、
歌詞の大意、ラテン語の訳。
大切に大切に持っていたものだということを、私は知っている。
「ただいま」
小さく声をかけてみたけれど、返事がなかった。
ただ、何かを堪えているような、小さな嗚咽が聞こえてくる。
少しむせているその声は、やはりいつもより幾分か、低くなっているようだ。
泣いているのだろう、と思った。
とても辛いのだろう、と思った。
けれど、
かけてあげられるような、優しい言葉が見付からない。
言葉は喉元まで上がってくるのに、唇の先から出ていってくれないのだ。
少し迷って、静かに部屋を出た。
暗い階段を下る時思い知る。
結局私は無力で、こんな場面ではいつもいつも、
姉になりきれないんだ…。
閉じられたカーテンの向こう側に静かなマイケルの気配がした。
部屋の床には、分厚い楽譜の束が一面に広がっている。
その中の一枚を拾うと、楽譜にはたくさんのメモが書かれていた。
ブレスをする箇所や、
強弱の付け方や、
歌詞の大意、ラテン語の訳。
大切に大切に持っていたものだということを、私は知っている。
「ただいま」
小さく声をかけてみたけれど、返事がなかった。
ただ、何かを堪えているような、小さな嗚咽が聞こえてくる。
少しむせているその声は、やはりいつもより幾分か、低くなっているようだ。
泣いているのだろう、と思った。
とても辛いのだろう、と思った。
けれど、
かけてあげられるような、優しい言葉が見付からない。
言葉は喉元まで上がってくるのに、唇の先から出ていってくれないのだ。
少し迷って、静かに部屋を出た。
暗い階段を下る時思い知る。
結局私は無力で、こんな場面ではいつもいつも、
姉になりきれないんだ…。