さよならの見つけ方 第3章 *君の声がする*
「建設関係の学校に行こうと思うんだ」
そんな言葉がクリスの口からこぼれたのは、秋も深まってきた午後のことだった。
その日は朝から雨が降っていて、傘を持って迎えに来たクリスと一緒に、
午前中はほとんど誰もいない図書館に行っていた。
「ちょっと遠いんだけどさ」
顔を上げずに続けるクリスの白い指が、ノートのページを静かにめくる。
「どこ?」
「ロンドン」
「…ロンドン?」
そこでようやく私を見てくれたクリスが、いつもよりゆっくりまばたきをする。
――――ロンドン。
私たちにとっては、何かと想い出の多い街だ。
5年前、
いつか二人で行こうねと、チャドと約束を交わした街。
初めてクリスと二人で行った、3年前の夏の日。
あれから何度か二人で訪れていたけれど、あの街にクリスが住むのかと思うと、不思議な感じがした。