さよならの見つけ方 第3章 *君の声がする*
「なんか全然想像出来ない。
一緒に暮らすとか…」
「そう?
オレは結構想像出来るけど」
しれっと言ってのけるクリスは物理の問題を一つ解き終えて、また次のページをめくった。
「私、自信ないよ。
生活力、ゼロに等しいもん…」
そう小さくもらした私の言葉に、クリスは顔を上げる。
「…最初っから上手くやろうなんて思わなくていいじゃん。
カンナだけに色々やらせるわけでもないし、
別に期待もしてないよ」
「うーん…」
「あと、お金もないから最初はボロいアパートで極貧生活だし。
理想の生活とは程遠いと思うけどね」
「…トイレつき?」
「さすがに共同はやだな…」
「うん」
「カンナ、料理のレパートリーは?」
「…自信持って作れるのは、5個くらい」
「多いじゃん」
「え、5個だよ」
「何も出来ないんじゃないかと思ってたから、全然いい方だよ」
「…クリスは?」
「3週間回るくらい、かな」
「え、私よりずっと多い…」
「当たり前じゃん。
親が家にいない日も多かったんだし」
「…二人で暮らしたら、
クリスもご飯作るの?」
「もちろん」
「ふーん」
ふーん。
そう言って笑うと、小さな台所に立つクリスの綺麗な後ろ姿を想像して、少し照れてしまった。