さよならの見つけ方 第3章 *君の声がする*
何年か昔の技術の授業中、
のこぎりで木材を切り出して椅子を作れという課題が出されたことがある。
渡される大きな木材と、のこぎりの匂い。
面倒くさいとか、出来るわけないとか、手に豆が出来るから嫌だとか、ぶつぶつ言ってるクラスメート達。
そんな中でクリスは一人涼しい顔をして、
誰よりも早く、誰よりも綺麗な椅子を簡単に作り上げた。
それは担当の先生ですらうならせる程の出来ばえで、昔からクリスをよく知っている私たちですら、言葉を失ってしまったくらいだった。
あっという間に課題を終わらせて暇を持て余していたクリスに、男子も女子も、たくさんのクラスメートが助けを求める。
私も工具を上手く使えずにかなり早い段階から手間取っていて、
何とか不恰好に組み立ててみたものの、椅子は見るからに傾いていた。
「お前これ、重心がおかしいよ」
見兼ねたクリスが手伝ってくれて、それからものの数分で見事に可愛い椅子が出来上がった。
のこぎりを握る私の手に重なるクリスの指は、やはり少しだけひんやりしていた。
ありがとう、と呟くと、
ん、とクリスも少し笑った。