さよならの見つけ方 第3章 *君の声がする*
課題が返却されたあと、私はその椅子に絵の具で色を塗って部屋のすみっこにおいた。






私が作ったんだよとマイケルに自慢すると、次の朝には薔薇の花が3本、椅子の上にちょこんと置かれていて、

それがとても嬉しかったことを覚えている。






その小さな椅子には今、ウサギのぬいぐるみが一つのっかっているのだけれど。













あの頃はまだ、クリスとこんな風になるなんて、想像もしていなかった。






昔の話題はよく出るけれど、椅子作りを手伝ってくれたあの時のことは、

何となくまだ話題にはのぼらない。










器用に工具を操る大きな手、

木材を切る真剣な横顔に、ほんの少しだけドキドキしてたこと。






いつも意地悪ばっかりしてたくせに、こうして手伝ってくれたことが、とてもとても嬉しかったこと。










思い出して照れ臭くて、少し笑った。






あの頃から、建設にたずさわりたいとクリスは思っていたのだろうか。

部屋にたくさんの本が並んでいたことも、私は気付いていた。










――――クリスならきっと、夢を叶えられるのだろう。






その夢についてきて欲しいと言ってくれていることが、

嬉しく、誇らしかった。

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