さよならの見つけ方 第3章 *君の声がする*
「カンナをロンドンに連れて行ってもいいですか」
クリスの言い出したそんな言葉に、向かい合わせたソファに腰掛ける二人の時間が、
一瞬凍り付いたかのように止まった気がした。
晴れた午後、
神妙な面持ちでソファに座るロバートとマイケル。
4人で話がしたいと言い出したクリスと私のために、時間を割いて集まってくれたのだ。
「一緒に住むのか?」
何秒かの沈黙を破ったのは、ロバートだった。
「はい」
静かに、だけども力強く答えるクリスの声がリビングに響く。
「お金は?」
「バイトして貯めた分と、
あとは学校通いながら少しでも働こうと思ってます」
「いつ頃?」
「…グラマー卒業したらすぐがいいなと思ってる。
住む所の候補は取り敢えず見つけてあるんだ」
「そうか…」
「…うん」
私の言葉に、ロバートは低く目を伏せた。
「やっぱりクリスは、建設関係に進むのか」
「はい」
ずっと相談でもしていたのだろうか。
ロバートが知っていたことに、少し驚いた。
「カンナから改まって話があるのって言われた時は、子供でも出来たのかと思ってドキドキしたよ」
張り詰めていた部屋の空気が、ロバートの言葉で少しなごんでゆく。
「…ロバートは、そっちの方が良かった?」
「孫を抱くのも悪くないな、とは考えたよ」
「…そうなんだ」
「カンナとクリスの子供なら、特にね」
そう言って笑うロバートの、深くなった目尻のしわが優しい。