古城の姫君
 そのときクロークスは、この女性に目を奪われていました。

 肩まである黒髪は輝きがあり、なめらかなベルベットのよう。
 
 大きな黒い瞳に、長いまつげ。
 
 それに透きとおるような白い肌。
 
 か弱くはかなげな印象をあたえる、華奢(きゃしゃ)な体型。
 
 どれをとっても申し分のない、とても美しい人でした。

「剣をおさめろ。そんなもの見せられたら怖くて動けないだろ」
  
 そう言われて、ジンジャーは剣をさやにおさめました。

「……あ、俺はクロークス・サイモン。こいつはジンジャー・スリンガーっていいます」

 自己紹介をし、ジンジャーも紹介されると、ようやく女性は安心したらしく、緊張でこわばった顔が少しだけ穏やかになりました。

 そして、すっと立ち上がり、二人に向き直って言いました。

「私はカルミア・デュオンといいいます。このお城、たまに入ったりしてたんですけど……」

 おそるおそる話すと、カルミアと名乗った女性は口ごもりました。
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