鈍感ガールと偽王子
「いただきますっ」
えーいっ、もう一気にいっちゃえ!
「……ちょっと」
意を決してグラスを口に付け、傾けた瞬間。
「きゃっ…!?」
いきなり、視界が揺れた。
さっきまで肩にかかっていた男の腕の重みと体温が消える。
な、何?
あたしは一瞬何が起きたのか理解できず、飲みかけのグラスを握り締めたまま、視線を上げた。
……え?
「痛ぇ!なにすんだよ!!」
ぶんっ、と掴まれていた腕を振りほどいた、さっきまであたしに絡んでいた男。
その腕を、掴んでいたのは。
怖い顔で、あたしの目の前に、立っているのは。