鈍感ガールと偽王子
「……それ」
そして、ゆっくりあたしの首元を指差す。
「虫にでも、食われたっていうの?」
「へ…?虫…?」
あたしは沙奈の指差す先を見ようとするけど、自分じゃ見られない位置だった。
「ここにもあるし」
そう言って、あたしのうなじをつつく。
今は髪を耳の横にひとつに緩く束ねていたから、沙奈にはそんな場所も見えているんだろうけど、あたしには見えない。
「な、何なの?なにがあるの?」
意味が分からずそう訊くと、沙奈は「ほんとにわかんないの?」と呆れたように訊き返してきた。
「わ、わかんないから訊いてるんじゃない」
「キスマーク」
キ……っ!?
さらりと言った沙奈を、あたしは思わず凝視していた。