鈍感ガールと偽王子


「…まあ、そうだな」



案の定、椎葉くんはそう言って苦笑。



「なんか、可哀相だね」



椎葉くんも、その彼女たちも。



そんなのただの恋人ごっこだ。



あたしはついそう言っていた。



「……」


うわっ…。


あたし、今言わなくていいこと言ったよね!?



あたしはハッとして椎葉くんを見た。



怒られても仕方ない。


だって、彼は本当の自分を受け入れられないことを恐れて、だからこうしてあたしを話相手に選んでくれてるっていうのに。



そんなあたしが、こんなこと言っちゃ、ダメだ。



……だけど、椎葉くんは怒るのではなく、ひどく悲しそうな顔をしていた。



泣きだしそうなくらい、顔を歪めて。


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