鈍感ガールと偽王子
「う、うん、そうだよ!あたしなんてね、今まで付き合ったこと無いんだよ?そんなあたしに比べたら、椎葉くんは偉いよ!ちゃんと恋愛してて!!」
あたしはそう言ってあははと声を上げて笑う。
言うつもりなんてなかったのに、思わずポロっと喋ってしまっていた。
彼氏なんていたこと無いってこと。
なんでもいいから、慰めたくて。
あたしの言葉なんかで、落ち込んで欲しくなくて。
「……え」
しかし、椎葉くんは驚いたようにあたしを見た。
「い、今、付き合ったこと無いって言った?」
「……言ったけど」
やっぱり、馬鹿にされるのかな…。
そう思うと、やっぱり怖かった。
「それって、もしかして」
何を恐れてるのか知らないけど、椎葉くんはなんだか困ったような顔をしていた。
「……もしかしてって何?」
「いや、その」
いつもの椎葉くんの口調からは程遠い、歯切れの悪い返事。