鈍感ガールと偽王子
あたしや椎葉くん同様、里奈も大学のごく近くにアパートを借りてひとり暮らしをしている。
だから、歩いて10分ほどであたしは里奈の家にたどり着いていた。
窓からは明かりが漏れていて里奈が部屋にいることがわかる。
……連絡、入れた方がよかったかな…。
突然押しかけたら迷惑だろうか。
先程までの決意がぐらぐらと揺らいでくる。
でも、電話やメールでは一体なんて切り出したらいいのかわからない。
やっぱり、直接じゃなきゃだめだ。
「……よし」
あたしはひとり気合いを入れて、里奈の部屋のインターホンを鳴らした。
「はーい」
家の中から里奈の声が聞こえる。
パタパタと走ってくる足音。
カチャ、と鍵の開く音の後、ゆっくりとドアが開いた。