鈍感ガールと偽王子
「……ううん。私の方こそ、ごめんね。美結の気持ち、全然気づいて無くて…」
私は、抱きしめたまま、ぶん、と首を横に振った。
……本当に、里奈が謝る必要なんかないんだ。
「美結、私、カケルくんのことはもちろん大好きだけど、美結のことだって大好きだから」
優しい声で里奈はそう言うと、ぎゅっと抱きしめ返してくれた。
「あたしも里奈のこと大好きだよ!!」
「あは、知ってる」
里奈はクスクスと笑った。
「ね、家入ろう?こんなとこで抱きあってたら私たち怪しすぎるよ」
「そだね」
あたしたちは笑いあって、家の中に入った。
まるで、ケンカなんてなかったみたいに、自然に笑えてたんだ。
「美結、もうご飯は食べたの?」
「あ、うん。食べてきた」
見ればテーブルの上には食べかけのパスタが乗っていて、里奈がちょうど晩ご飯を食べていたんだと悟った。