恋するキミの、愛しい秘めごと
榊原さんから招待状を受け取ってから、1カ月と16日後。
篠塚さんには、「一応連絡してから行ったら?」と言われたけれど、結局カンちゃんには連絡をしないまま。
私はイギリスのヒースロー空港に降り立った。
「えっと、あっちかな……」
飛行機を降りて、入国審査の窓口表示を見上げる。
“other passports”と表示された窓口には長蛇の列が出来ていて、ちょっとだけゲンナリしたけれど、仕方がない。
カバンの中のパスポートを手に持って、その最後尾に並んで順番を待った。
楽しそうに話している前のグループは、観光に来た学生グループだろうか。
行きたい観光名所や「空気が違う」とか「英語しゃべれるかな」とか、そんなことを話す声はとても楽しそう。
それに対して私はというと……。
「胃が痛い」
あの“地球”の本来の製作者であるカンちゃんの為に、改めて開かれる事になった“お披露目パーティー”。
それなりに大きな規模のものらしいから、カンちゃんと話が出来るかどうかさえ分からないのに。
今からこの緊張って、どうなんだろう。
でも、話せなくたって、彼は確実にパーティー会場にはいる。
――ダメだ。
それを考えるだけで何だか泣きそうになる私は、どれだけカンちゃんを恋しく思っていたのだろう。
だけど、カンちゃんは……。
篠塚さんと榊原さんと話したあの日から、ここに来るべきか否かを、ずっと考えていた。
私から距離を置くために、自分から離れて行ったカンちゃん。
その私がこうして彼に逢いに来たことを、彼自身はどう思うだろうか。
もしも拒絶されたら……。
その時のことを考えただけで、胸がバクバクして、やっぱり泣きそうになって。
それでも――……
逢いたくてここまで来たんだから。
目の前の学生グループが嬉しそうにゲートをくぐって行く様子を見つめながらゆっくり息を吐き出して、少し緊張しながら管理官にパスポートを手渡した。