スーツを着た悪魔【完結】
まぁ「口止め料」と言っていきなりキスするような人だから、手を繋ぐなんてどうってことないのかもしれないけど、だけど……。
だけど私は男の子と手を繋いだの、高校のフォークダンス以来なのに……。
「あのっ……」
抗議しようと震える声を振り絞るまゆだったが「デートってこういうことだと思うけど」と、深青に釘を刺されてしまった。
「違う?」
「違わない、かな……」
「だろ」
深青は繋いだ手を持ち上げて、目を細めて笑ったあと、それから急に真面目な顔をして彼女を見下ろした。
「まゆ」
「は、はいっ……!」
こういうのを「テンパる」というのだろうか。
まともに思考が働かなくて、ただ自分をジッと見つめる深青から目を離せなくて――
「どうせなら今日は楽しもう」
「え……」
楽しむ……?
思いもよらなかった深青の言葉に素直に驚いたまゆは、その長いまつ毛に縁どられた黒い瞳をゆっくりと瞬かせる。