スーツを着た悪魔【完結】
その瞬間、くしゃっとまゆの表情が歪む。
黒い瞳に膜が張る。
「大丈夫だからっ……」
誰がどう見たって大丈夫ではないのに、大丈夫と震えながら言い張る彼女。
つま先に視線を落として、ぎゅっと唇をかみしめている。
雨に濡れたせいじゃない、何かに彼女は怯え、震えている。
なのに目の前の俺を無視して……
深青の中の何かが、プツン、と音を立てて切れた。
「――いい加減にしろよ」
パタン――
深青が持っていた傘がコンクリートの上に落ちる。
深青の低い声に、ハッとしたようにまゆが顔を上げた。
と同時に、すくうようにまゆの頬を包み込んだ深青の熱い手。
「俺を見ろ。もう、目を逸らすな」
二人の視線が絡み合う。
きつく――