スーツを着た悪魔【完結】
「うん」
まゆがうなずくと、深青はそのまままゆのこめかみに唇を移動させ、口づける。
――――……
到着したホテルのエントランスからまっすぐにエレベーターへ向かい、最上階のボタンを押す。
深青は定宿としてブルーヘブンホテルに部屋を取っているらしい。
一泊いくらするんだろうとか、いや定宿にしているということは月極めで割引が聞いているんだろうか、とか。緊張から来る現実逃避なのか、どうでもいいことを考えてしまう。
「まゆ……」
部屋に入るとすぐに、後ろから抱きしめられた。
ふんわりと薫るすみれの香りに包まれると、少しだけ緊張がほぐれる。
目を閉じ深青に身をまかせるとそのまま夢を見ているような気分になる。
体の前にまわった深青の腕に手のひらを載せた。
大きくてあたたかい深青に抱きしめられていると守られているような気分になって、もしかしたら自分が価値のある生き物のような錯覚を覚えて……幸せで泣きたくなるのだ。