スーツを着た悪魔【完結】

それまで深青は、恋愛というのは自分に「メリット」がある相手とするものだと思っていた。


愛してくれるから。気分をよくしてくれるから。
ひと肌が欲しいとき側にいてくれるから。


けれどまゆに何かをしてもらったから好きになったわけでもなく、気が付いたら大きな落とし穴に落ちたように、まゆに恋をしていた。

どうしてこんなにハマってしまったのか、自分でもわからないほどに。まゆという存在は深青の中でキラキラと輝く宝石へと変化していた。


そしてまゆはまゆで、そんな深青の与えてくれるぬくもりから離れられないでいた。


幼いころからまともな愛情を受けずに育ち、恋愛から逃げてきたまゆにとって、まっすぐ包み込むように思いを寄せてくれる深青の気持ちは、何物にも代えがたく――

そしていつか近い将来失ってしまうのだと、心のどこかでブレーキをかけつつ、それでも今この一瞬「愛情」というものを感じていたかった。


永遠に続くものだとは思っていないけれど、すがっていたかった。



「汗かいてるから……」



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