スーツを着た悪魔【完結】
「深青……」
濡れた瞳。かすれた声。
深青の膝が、まゆの足の間に割り入れられる。
大きな手のひらがブラウスのボタンにかかる。
一つ、二つ、とボタンが外されて――
その瞬間、まゆの背中を『得体のしれない恐怖』が駆け上がった。
それは長年まゆの中で生き続けてきた『怪物』だった。
深青の気持ちに癒され、傷はふさがったと見せかけ、まゆが幸せになろうとすると牙をむく――
深青が好きだという気持ちよりも強く……
彼女を傷つける。
罪を忘れるなと、現実を突きつける。
「っ――」
息を飲むまゆの喉が、ひゅっと笛のように鳴った。
「い、や……っ!」
気が付いたら、両手で深青を突き飛ばしていた。