スーツを着た悪魔【完結】
「まゆっ……」
「――ごめんなさい」
何度呼びかけても、相変わらず謝るだけで自分を見ないまゆに、段々腹が立つ。
自分のほうを振り向かせようと、彼女の頬に手を伸ばそうとした深青だったが――
うつむいた彼女のまつげの先には、まるで透明なビーズを飾ったかのように涙が残っていた。そして頬には流した涙の跡が……。
「――」
頭から水をかけられたような気分になり、口ごもる。
まゆに触れられない手は宙をさまよい、そのまま拳を握るしかない。
もう、深青に彼女に触れる勇気はなかった。
「ごめんなさい……」
そしてまゆは部屋を出て行く。
「――ッ」
ドアが閉じられた音に深青は体を震わせ、そのまますぐそばにあったソファーを蹴り上げる。
「クソッ!!!!!」
ほんの少し前まで、幸せでたまらなかったのに――
まゆも同じ気持ちだと、そう、思っていたのに!
荒れ狂う感情を押さえられないまま、深青は一人、きらびやかな夜景を見下ろすブルーヘブンホテルの一室で立ち尽くしていた……。
――――……