スーツを着た悪魔【完結】

相手はあの豪徳寺深青。

誰からも尊敬され、愛される、花の香りをまとう、手の届かない本物の高嶺の花。

住む世界が違う、関係のない人だ。

早くこの場を離れないと――


なのに、彼の声を聞いてから、まゆの足はその場に凍り付いたまま動かない。



その瞬間

「――はぁ……わかんないヤツだな」

深いため息とぞんざいな声が聞こえて、耳を疑った。



え……今の、なに?



「どういうつもりだったもなにも、誘ったのはお前。最初から俺に抱かれたくてたまらなかったんだろ、違う? 違わないだろ。なのに今更俺にやり逃げされたみたいなこと言われるのは腑に落ちねえよ」



目の前の御曹司にまったく似合わない言葉が耳を右から左に通り過ぎていく。


信じられない……

これが豪徳寺深青?


心臓がドキドキと鼓動を早める。




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