スーツを着た悪魔【完結】
「なにか、あるんだろ?」
「――」
体を強張らせるまゆの緊張から「何か」が伝わってくる。
「無理に聞き出そうとは思ってない……けど俺は……お前に優しくしたいし、側にいたい。だから逃げるな。俺から目を逸らすなよ……」
「み、さお……」
ぎゅっと、深青の着ていたスーツの上着をつかむまゆ。
そのまま額を押し付け、静かに涙を流した。
その涙は嬉し涙なのか……なんなのか。自分でもよくわからない。
けれど深青の不器用なキスも、抱擁も、言葉も、冷え切ったまゆの心を温めてくれたのは間違いなかった。
そして一方、涙に濡れて冷たくなったまゆの体を温めたい一心で、深青はそのまままゆを抱き上げソファーにそっと座らせた。