スーツを着た悪魔【完結】

彼は「優しいOB」なんかじゃない。

誰にでも公平に振舞っているように見えるのは演技をしているからだ。


いや、演技じゃないかもしれない。

彼にとって、私たちなんか「ない存在」であれば――


「まぁ、いいか」



彼は薄く笑い、そして壁に手をついたまま、ゆっくりと上半身を傾ける。



殴られる――?


緊張と恐怖で凍り付くまゆがギュッと閉じた瞬間

「口止め料」

深青は優しくささやき、まゆの唇にキスを落とした。



そしてまゆに一言も謝らず、そのまままゆを置いて歩いていく。



こうして、19歳のまゆのファーストキスは、最低な形で奪われた。





――――……




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