スーツを着た悪魔【完結】
「――お兄ちゃんに酷いこと言われたかされたか、したんじゃないの?」
「ち、ちがい、ますっ……」
まゆはプルプルと首を横に振り、そして涙をぬぐいながら、未散に頭を下げた。
「本当に違うんです。私が悪いんです……」
「まゆさん……」
未散は美しい眉を八の字にし、持っていたピンヒールを床に置き、優雅に足を入れた。
しおれるまゆを見ていると、小さくて可愛いものが大好きな未散は胸がキュンキュンして抱きしめたくてたまらなくなるのだが……
兄がまゆを本気で心配しているようにも見えたので、グッと我慢することにした。
「ちょっと、お兄ちゃんは出ていって」
「は?」
「まゆさん、よれよれになっちゃってるじゃない」
「ああ……」
「女の子はあんまり泣き顔見られたくないものなのよ。お兄ちゃんはおいしいケーキでも買ってきて?」
「え、あ、ちょっと!」