スーツを着た悪魔【完結】
温かい……気持ちいい……。
そして薫る、ダマスカスローズの香り……。
だけどどうして?
「あの……」
「うちの家族はねえ、仲良し一家っていうか、スキンシップ過多なのよね」
「え……?」
「寂しがっている子がいたら、こうしてハグして、涙を止めてあげるのがしきたりっていうか」
寂しがってる……
寂しい?
私が?
まゆは未散の言葉にあっけにとられたが――
すると、バタンとドアが開き、息せき切った深青が抱えるほど大きなケーキの箱を抱えて飛び込んできた。
「はぁ、はぁ……おい、まゆ、何が好きだ? わからないからとりあえず全種類っ……」
「あら、お兄ちゃん、驚くほど早いわね。じゃあお茶入れてもらわなきゃ」