スーツを着た悪魔【完結】
未散はさっきの鬼の形相はどこへやら、深青の机の上の電話を取り、楽しげに「紅茶3つ持ってきて貰える?」と告げ、受話器を下ろす。
「さあ、おやつの時間にしましょう」
彼女の瞳の中に、自分を見つめる深青とよく似た輝きを発見して、さっき自分を抱きしめていた深青の顔を思い出して、ぽっと胸の奥に小さなともし火が灯るようだった。
この二人は……とても暖かい家庭に育ったんだと改めて思う。
自分とは違う……とても幸せなお家。
運ばれた熱い紅茶を飲みながら、ケーキを口に運ぶ。
まゆには友達もいなかったから、こんな風に複数でワイワイと気兼ねなくケーキを食べたこともなかった。
「このモンブラン、とてもおいしいわ。はい、まゆさん一口あげる」
「えっ……?」