スーツを着た悪魔【完結】
顔をあげると、キラキラした笑顔で未散がこっちにケーキを一口差し出している。
彼女の笑顔のあまりの美しさに目がくらみそうになりつつ、まゆはドキドキしながらうなずういた。
ちらりと、斜め前で紅茶を飲んでいる深青に視線を向けると、呆れたようにため息をついていた。
「あーん♪」
「あ、あーん……」
恐る恐る口を開けると、未散がスプーンをまゆの口の中に入れる。
と同時に、ふんわりと溶ける栗の味にあっと驚いた。
「おいしい……」
「でしょ」
自慢げに笑う未散。
「――未散、その辺にしておけよ」
「あら、お兄ちゃんもしたかったのね? 残念でした~」
そんな未散に、深青も、仕方ないな、といった風に優しく笑う。
二人の笑顔を見ていると、胸の奥の柔らかい場所を針でチクチクさされるような気持ちになる。