スーツを着た悪魔【完結】
ああ、そうか。
さっき未散さんが言ってたの……言われた時はわからなかったけど……私、誰かとこんな風に笑ったことない。
「――まゆ?」
深青がソファーから腰を浮かす。
「まゆさん……」
「っ……」
「どうした、どっか、痛いのか?」
ひどく焦った深青が、まゆの肩に手をかけようとして、けれどどこか迷ったように宙に浮かせる。
慌てて両手で顔を覆ったけれど、涙がどんどん溢れて頬を伝った。
「ち、違います、違うんですっ……」
「違う?」
「わたし、今まで、こんなことしたことなくてっ……だから、嬉しく、てっ……」
本当に、ずっと一人だったんだ。
そしてそれを当然だと思っていたけど……寂しかったんだ。