スーツを着た悪魔【完結】
「じゃあ、深青とよく似てるんじゃない?」
「お前なぁ……」
いたずらっぽく笑うまゆを見て、深青は頬を緩め……そしてソファーの隣に座る彼女の手を、そっと握った。
まゆはドキリと緊張しながら背筋を伸ばす。
手の甲に重ねられた、彼の心のように熱い手が急に怖くなったけれど、それを振り払って逃げることは出来なかった。
離れなければいけないことは百も承知だが、体が、心が、言うことを聞いてくれない。
「前回、ああいうことはあったけど……俺はお前を手放すつもりも、離れるつもりもねえし」
「……」
深青はまゆの手の甲に自分の手のひらを重ねたまま、視線はまっすぐに正面を向いたまま、淡々と言葉を続ける。
「お前が俺のことが死ぬほど嫌いで顔も見たくないっていうんなら別だけど、俺はそうは思わない」
「――」
「まゆ。お前、俺が好きだろ?」