スーツを着た悪魔【完結】
人は恋に破れても死なない。わかってる。
だけど――
どうしてこんなに胸が痛く、苦しくなるんだろう?
視線を感じ、顔を上げると、深青が私を静かな目で見つめていた。
「まゆ」
「っ……」
やめて。
これ以上好きにさせないで……。
思わず首を横に振り、逃げるようにうつむくまゆ。
私は人を不幸にする――
甘い言葉で、私を揺さぶらないで。誘惑しないで。
その様子を見て、深青は一瞬眉をひそめたが、唇をかみしめるだけで前回のように強く問い詰めたりはしなかった。
それどころか、驚くようなことを口にしていた。