スーツを着た悪魔【完結】
シャツだって何だって、きっと彼のためのもので
彼はそうやって、自分のためのものに囲まれて生きてきて
だから無駄なものなんか目に入らなくて……
目の前に座っている私に目線ひとつ寄越さない。
いや、寄越されたって困るんだけど。
きっと彼は三年も前に「口止め料」を払った19歳の女の子のことなんか覚えていないだろう。
けれど、まゆはこの三年間、あの最低なファーストキスを奪った深青のことを、意識して自分の世界から外していた。
思い出せば心が揺れるから。
ザワザワと強い風にあおられる木々のように、心が落ち着かなくなるから……。
「そんなんじゃ人生つまらなくない?」
「えっ……?」
突然投げかけられた言葉に、まゆは過大に反応をしてしまった。