スーツを着た悪魔【完結】
「……」
押し殺してはいるが激しい口調のまゆの前に、結局口ごもるしかない頼景は、想像以上に後味の悪いものを感じながらも、同時にこれでいいのだと自分に言い聞かせる。
過去何度も、豪徳寺の名前に近づいてきた不穏分子に困らせられた経験がある頼景だ。
面倒な女に周囲をうろつかれるのは出来るだけ避けたいし、芽は早いうちに摘んでいたほうがいいということがわかっている。
ただ、今までのように金銭で解決したり、弁護士を通して交渉しないのは、まゆがそういう女には見えないからで――
深青の親友たる自分が憎まれてでも、直接言ったほうがいいと思ったからだ。
そう、頼景は頼景なりにまゆの人となりを評価していたのだが……頼景の思いなど、彼女には関係のないことだろう。
「失礼します」
まゆはぺこりと頭を下げ立ち上がると、財布から千円札を抜き取ってテーブルの上に置く。