スーツを着た悪魔【完結】
「あ、ちょっと待ってください。支払いは――」
お札を手に取って立ち上がる頼景だったが、
「あなたにごちそうしてもらう筋合いはありませんから」
「――ッ」
振り返りざまのまゆの黒い瞳に気圧され、手が停まった。
「自分の身はわきまえています。ご心配なく……。失礼します」
過去からは逃げられない。
目を閉じても、耳をふさいでも、どこまでも追いかけてくる。
だけど……ここで絶対に泣いてたまるもんか……!
潤む瞳から零れ落ちそうになる涙を、必死で乾かしながら、さざ波のように押し寄せてくる負の感情から自分を守るため、まゆは足を前に踏み出す。
ジリジリと頬を焦がす、大嫌いな夏の日差しに焼かれることも今は厭わなかった。