スーツを着た悪魔【完結】
悠ちゃんは学生時代から、こんな雰囲気だったっけ。
そしていつも私に本のお土産を買ってきてくれて……
不思議だな。
いつだって彼は優しかったはずなのに(今だって気にかけてくれていることは痛いほどわかる)
思い出すのは昔のことばかりだ。
「悠ちゃん」
まゆから、電話を受けた時の緊張は消えていた。
懐かしくなりながらも、文庫を閉じバッグに仕舞う。
「待たせたね。行こうか」
彼は座席につかないまま、腕時計に目を落とす。
「どこに?」
「レストランに予約を入れてるんだ、なかなか予約が取れないところなんだけど、友人のツテでね。特別だよ」
「わ、楽しみ」
表情を和らげるまゆを見て「よかった」と、悠馬も嬉しそうに微笑む。
そして二人はカフェを出てタクシーに乗り込んだ。