スーツを着た悪魔【完結】
彼らが向かったのは、ミシュランの一つ星も獲得しているというフレンチだった。
まゆにはやはり敷居が高かったが、ウニとトマトのジュレに、カリフラワーのムース。分厚いサーモンの白ワインソースなど、まゆの好物ばかり出てくるうちに、すっかり緊張はほどけていた。
「美味しかった。ごちそうさまでした」
濃厚なミルクのシャーベットを平らげて、まゆはテーブルの向こうの悠馬に小さく頭を下げる。
「まゆ、少し疲れていたみたいだね」
「そう、かな……」
涼しげな瞳に見据えられて、なぜか後ろめたい気分になったまゆは、目線を手元に落とす。
「そうだよ。元気がないから、心配していたんだ。イヤなことでもあった? 仕事が辛いなら、もう辞めたらいいじゃないか」
「悠ちゃん……」
「まゆ一人くらい、僕が食べさせてあげられるんだからね。家族なんだから」
美しいシャンパングラスを傾け、悠馬は切れ長の目を細めて笑う。