スーツを着た悪魔【完結】
女のほうが優雅な手つきで名刺入れから名刺を取り出し、悠馬の手の中に押し込む。
どこかゲームを楽しんでいるような雰囲気だ。
「待ってるわ」
そして女はすっと悠馬から体を離し、こっちへと向かってくる気配。
慌ててまゆはその場からきびすを返し、一呼吸置いてからテーブルへと戻る。
悠ちゃん……もしかしてナンパされてた?
今夜は無理って……私がいるから?
「――まゆ」
「っ……!」
普通にしようと思っていたのに、あからさまに驚いてしまった。
悠馬の目からはひどく挙動不審に見えただろう。
「あ、悠ちゃん、私、帰る……終電が――」
見てはいけないものを見たという自覚があった。
しどろもどろになりながら、まゆはぎゅっとバッグをつかむ。
あれは悠ちゃんの別の顔……?
なんだかまともに顔が見られない。