スーツを着た悪魔【完結】
久しぶりに日本に帰ってきたはいいが、遠く離れたヨーロッパで連日会議やパーティーに出席していた深青は酷く疲れていた。
空港から真っ直ぐマンションへと戻り、半日泥のように眠っていた。
夕方に目を覚まし、熱いシャワーを浴びた後、滅多に使わない自宅の電話に入っている留守電を聞き流しながら、冷蔵庫を開けてチーズとサラミをナイフで切り、そのまま口に運ぶ。
まゆに連絡してみようか……。
あれから妙に忙しく、なかなか自由な時間が取れなかった。
中途半端になることを恐れて、まゆと向き合うことを避けていた。
けれどいつまでもこうしていられるはずもない。
自分にはまゆが必要なのだから……。
『深青。俺だ』
何件目かの留守番電話の声に、顔を上げる。
「ヨリ……?」